必要貯蓄率をイチから計算してみました

家計管理

こんにちは! よっこ夫です。

「老後のために、毎月いくら貯めればいいのか」

これは我が家がずっと気になっていたことでした。

よく「収入の2割」「3割」と言われますが、 その数字がどこから出てきたのかが分かりませんでした。

そこで、自分で式を作ってみることにしました。

(注意)この記事は数式がたくさん出てきます。数式アレルギーの方はご注意ください。

よっこ
よっこ

2割って、誰が決めたの?

よっこ夫
よっこ夫

それが分からないから、自分で計算してみた。

よっこ
よっこ

できるものなの?

よっこ夫
よっこ夫

四則演算だけでできたよ。


同じ考え方の公式は、すでにあります

先にお断りしておきます。

調べてみると、考え方の式はすで提唱されています。

「人生設計の基本公式」と呼ばれるもので、 山崎元さんと岩城みずほさんが提唱されています。

必要貯蓄率を求める式として知られていて、 検索すると、数字を入れるだけで計算できるページも見つかります。

ただ、正直に言うと——

式だけを見せられても、私にはよく分かりませんでした。

s=b(xY−P)−AY(a+xb)s = \frac{b\,(x\,Y – P)-A}{Y\,(a + x\,b)}

いきなりこれを出されても、なぜこうなるのかが分かりません。

分からないまま数字を入れて「19.6%です」と出てきても、 それが自分の数字だとは思えませんでした。

そこで、この記事では式を一から導きます。

結論を先に言うと、たどり着く式はまったく同じです。

この記事でお伝えしたいことは、答えではなく、そこまでの途中です。

よっこ
よっこ

答えがもう分かってるのに、計算するの?

よっこ夫
よっこ夫

答えは分かってる。でも、なぜそうなるかが分からない。

よっこ
よっこ

それ、意味ある?

よっこ夫
よっこ夫

ある。途中が分かると、何を変えれば数字が動くかが分かる。


考え方は、シンプルです

難しそうに見えますが、やっていることはこれです。

現役時代に貯めた額 = 老後に足りない額

これだけです。

現役のうちに貯めたお金で、老後に足りない分を埋める。 ちょうど埋まるときの貯蓄率が「必要貯蓄率」です。

この記事では、投資の運用益は考えません。 貯めたお金が増えない前提で計算します。 (理由は最後に書きます)


使う記号

記号意味単位
Y手取り年収(将来の見込みを含む平均)万円/年
a現役年数(あと何年働くか)年
b老後年数(引退後、何年生きるか)年
P年金額(手取り)万円/年
x老後生活費率倍
A現在保有の金融資産万円
s必要貯蓄率(求めたいもの)—

x(老後生活費率)とY (手取り年収)だけ、少し説明が必要です。

x(老後生活費率)は「老後の生活費は、現役時代の生活費の何倍か」という数字です。 年収の何倍ではなく、実際に使っている生活費の何倍かです。子どもが独立して食費が減ったり、通勤がなくなったりするので、 一般に1より小さくなります。

Y (手取り年収)は現在の収入ではなく、「今後、現役時代に見込まれる手取り年収を考慮した平均値」です。一般的に年齢とともに手取り年収が増えるならば、現在の手取り年収よりも大きくなります。


ステップ1:まず、年金がない場合

いきなり完成形を出さず、一番単純なところから始めます。

年金はゼロ。老後も現役時代と同じ金額を使う。

この場合、どうなるでしょうか。

貯める額

毎年の手取り Y のうち、s の割合を貯金します。 それを a 年続けます。

貯める額 = s × Y × a

使う額

現役時代の生活費は、手取りから貯金を引いた残りです。

現役時代の生活費 = Y × (1 − s)

老後も同じ金額を使うので、b 年ぶんで

老後に必要な額 = Y × (1 − s) × b

式にする

この2つが等しくなればいいので、

s × Y × a = Y × (1 − s) × b

両辺を Y で割ります。

s × a = (1 − s) × b
s × a = b − s × b
s × a + s × b = b
s × (a + b) = b

したがって、

非常にきれいな形になりました。

試してみる

仮に、あと25年働いて、そのあと30年生きるとします。

s = 30 ÷ (25 + 30) 
  = 30 ÷ 55 
  = 0.545

54.5%

手取りの半分以上を貯金しなければなりません。

よっこ夫
よっこ夫

年金がないと、手取りの54%貯めないといけない。

よっこ
よっこ

無理でしょ、それ。

よっこ夫
よっこ夫

無理だよね。だから年金があるんだと思う。

ここで分かるのは、年金がいかに大きいかということです。 次のステップで入れてみます。


ステップ2:年金を入れる

老後は、年金 P が毎年入ってきます。 だから、足りないのは「生活費 − 年金」の分だけです。

老後に足りない額 = ( Y × (1 − s) − P ) × b

これが貯めた額と等しくなればいいので、

s × Y × a = ( Y × (1 − s) − P ) × b

右辺を展開します。

s × Y × a = Y × b − Y × b × s − P × b

s を左に集めます。

s × Y × a + Y × b × s = Y × b − P × b
s × Y × (a + b) = b × (Y − P)

したがって、

s=b(Y−P)Y(a+b)s=\frac{b\,(Y-P)}{Y\,(a+b)}
記号意味単位
Y手取り年収(将来の見込みを含む平均)万円/年
a現役年数(あと何年働くか)年
b老後年数(引退後、何年生きるか)年
P年金額(手取り)万円/年
s必要貯蓄率(求めたいもの)倍

試してみる

ここでは例として、こんな数字を入れてみます。

値
Y(手取り年収)500万円
a(現役年数)25年
b(老後年数)30年
P(年金・手取り)200万円

s = 30 × (500 − 200) ÷ ( 500 × (25 + 30) )
  = 30 × 300 ÷ ( 500 × 55 )
  = 9,000 ÷ 27,500
  = 0.327

32.7%

54.5%から32.7%まで下がりました。 年金が、必要貯蓄率を20ポイント以上下げているということです。


ステップ3:老後の生活費は、現役より少ない

老後は現役時代ほどお金を使いません。

  • 子どもが独立している
  • 通勤がない
  • 住宅ローンが終わっている

そこで、老後の生活費は現役時代の生活費の x 倍とします。

老後の生活費 = x × Y × (1 − s)

足りない額は、

( x × Y × (1 − s) − P ) × b

式はこうなります。

s × Y × a = ( x × Y × (1 − s) − P ) × b

展開します。(x(エックス)と×(かける)がわかりにくくてすいません)

s × Y × a = x × Y × b − x × Y × b × s − P × b

s を左に集めます。

s × Y × a + x × Y × b × s = x × Y × b − P × b
s × Y × (a + x × b) = b × (x × Y − P)

完成した式がこれです。

s=b(xY−P)Y(a+xb)s = \frac{b\,(x\,Y – P)}{Y\,(a + x\,b)}
記号意味単位
Y手取り年収(将来の見込みを含む平均)万円/年
a現役年数(あと何年働くか)年
b老後年数(引退後、何年生きるか)年
P年金額(手取り)万円/年
x老後生活費率倍
s必要貯蓄率(求めたいもの)—

試してみる

さきほどの数字に、x = 0.7(老後の生活費は現役の7割)を加えます。

s = 30 × (0.7 × 500 − 200) ÷ ( 500 × (25 + 0.7 × 30) )  
 = 30 × (350 − 200) ÷ ( 500 × (25 + 21) )  
 = 30 × 150 ÷ ( 500 × 46 )  
 = 4,500 ÷ 23,000  
 = 0.196

19.6%


ステップ4:今ある貯金を入れる

すでに貯金がある場合、その分だけ必要貯蓄率は下がります。

現在の金融資産を A とすると、

s × Y × a + A = ( x × Y × (1 − s) − P ) × b

同じように整理すると、

s=b(xY−P)−AY(a+xb)s = \frac{b\,(x\,Y – P)-A}{Y\,(a + x\,b)}
記号意味単位
Y手取り年収(将来の見込みを含む平均)万円/年
a現役年数(あと何年働くか)年
b老後年数(引退後、何年生きるか)年
P年金額(手取り)万円/年
x老後生活費率倍
A現在保有の金融資産万円
s必要貯蓄率(求めたいもの)—

仮に今の貯金が500万円あるとすると、

s = (4,500 − 500) ÷ 23,000 = 0.174

17.4%


数字の変化をまとめると

条件必要貯蓄率
年金なし・老後も同じ生活費54.5%
年金あり32.7%
+老後の生活費が7割19.6%
+今ある貯金500万円17.4%

前提を1つ変えるだけで、数字が大きく動きます。

よく聞く「2割」という数字は、 だいたいこのあたりから出てきているのだと思います。


我が家の場合


ねんきん定期便の見込額を使って計算したところ、我が家の必要貯蓄率は【21.5】%でした。我が家は本多静六式の「収入の4分の1(25%)」を実践しています。計算結果と比べると、下回っている ことになります。

この計算の限界

大事なことなので、正直に書いておきます。

この式は、かなり単純化しています。

1. 投資の運用益を考えていません

貯めたお金が増えない前提です。 実際に運用すれば、必要貯蓄率はこれより下がります。

つまりこの数字は、多めに見積もった安全側の値です。 我が家はあえてこの前提にしました。

2. インフレを考えていません

すべて「今の物価」で計算しています。 物価が上がれば、必要な額も変わります。

3. 将来の見込み収入は不確実です

実際は昇給も減収もあります。

4. 年金額は変わる可能性があります

ねんきん定期便の見込額は、今の制度が続いた場合の目安です。

5. 介護や医療の大きな支出は入っていません

別に備えが必要だと考えています。


それでも計算してよかったこと

数字が正確かどうかより、 「何を変えれば、どう動くか」が分かったことが収穫でした。

  • 年金が20ポイント以上効いている
  • 老後の生活費を抑えられると、大きく下がる
  • 今ある貯金も効く

漠然とした不安が、手を動かせる課題に変わりました。

よっこ
よっこ

結局、いくら貯めればいいの?

よっこ夫
よっこ夫

うちの場合は21.5%。でも前提を変えると動く。

よっこ
よっこ

じゃあ毎年計算し直したほうがいいね。

よっこ夫
よっこ夫

そうだね。ねんきん定期便が来たらやろう。


参考にした情報

計算に使う数字の調べ方

必要な数字どこで調べるか
P(年金見込額)日本年金機構「ねんきん定期便」「ねんきんネット」
b(老後年数)厚生労働省「簡易生命表」の平均余命
x(老後生活費率)総務省統計局「家計調査」の高齢者世帯の家計収支
Y(手取り年収:将来の見込みを含む平均)源泉徴収票

考え方の出典

この記事で導いた式は、 「人生設計の基本公式」(山崎元氏・岩城みずほ氏)として 知られているものと同じ形です。


この記事がしていること、していないこと

していないこと公式を紹介すること。新しい式を作ること
していることその式が、なぜその形になるのかを一から導くこと

式そのものは、先人のものです。 私が考え出したものではありません。

この記事にあるのは、その式にたどり着くまでの過程だけです。

ただ、過程をたどったことで、

  • 年金がどれだけ効いているのか(54.5% → 32.7%)
  • 老後の生活費を抑えると、どれだけ下がるのか(32.7% → 19.6%)

が、自分の感覚として分かりました。

答えを受け取るのと、答えにたどり着くのとでは、 納得の仕方が違うのだと思います。


※この記事は我が家が自分たちのために行った計算の記録です。 私たちはファイナンシャルプランナーでも金融の専門家でもありません。 ここで示した式は、投資の運用益・インフレ・収入の変動などを考慮していない 単純化したものであり、将来を保証するものではありません。 必要な備えはご家庭の事情によって大きく異なります。 実際のご判断にあたっては、ねんきん定期便など一次情報をご自身でご確認いただき、 必要に応じて専門家にご相談ください。

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